旅先の何気ない光景は決して言葉には表わすことはできない。カメラでさえ、その風情を留めることはできない。
横浜に移り住んで早や15年。東京と横浜の挟間を今日も彷徨う。
何気ない街の景色に思い出が油絵のように滲んでいく・・・
街を歩く人の顔を観察するのは面白い。人は歩けば歩くほど無垢な顔になっていく。
青い空の下を潜り抜け、白いパラソルの下でコーラを飲み干す・・そんな少年の日の思い出。
北海道の旅。知床を目指してひたすら車を走らせた道中で見かけた無人駅。
赤いパラソルの下、息を潜めてくつろぐ人達。
今日も新しい旅人を迎えるホテルのソファ。しばし無人の静寂にライトの灯がやさしく包むこむ。
時計の針が止まる時。周りの空気も息をひそめる。
石畳はどこまでも暑く、旅人の視線の先を溶かしていく
幸せな二人がゆっくり歩くその先に、新しい道が作られていく
夕暮れ時。何かが終わり、何かが始まろうとしている。
新しい旅の相棒。いきつけのショップで出会った流行とは無縁の形のバッグ。くたびれた男の人生の続きを横から見届ける新しい相棒。
(終)
2010年8月作