「俺たちの旅」- 鑑賞記録 – 5.十年目の再会


青春TVドラマ「俺たちの旅」の鑑賞記録。


5.十年目の再会

すっかり大人になったオメダ(田中健)が波止場で物思いにふけっているシーンから始まる。
本編の青春ドラマとはだいぶ違ったトーンだ。

グズ六(秋野太作)は実家の土地に両親が建てたマンションの一角でNSサービスという会社をしている。
そして美延で農協の貸付係をしているというワカメ( 森川正太 )と再会する。
カースケ(中村雅俊)たちと皆で会ったのは、オメダのお母さんの葬式の時で4年前だ。
オメダは勤めている会社がつぶれ、女房の実家の鳥取に帰っていた。
スッカリ疎遠になっている。



あれだけ学生時代、そして“なんでもやる会社”で熱い青春時代を共にした4人だったが、それぞれの人生を送って関係も疎遠になっている。
甘酸っぱい青春を引きずったドラマを期待したファンには冷水をかけるような、とても”現実的な“設定なのだ。

社会に出て10年。誰もが必死に自分の”社会的基盤”を作るのに過ごす期間だ。
仕事に精を出す。
結婚をする。
まだまだ先の長い人生に向け、ひたむきに生きる時期だ。
ただ誰しもが順調に進むわけではない。

三者三様の人生

「十年目の再会」は、オメダが失踪してしまい、カースケ、グズ六、洋子が久しぶりに再会して探しに行くというストーリーだ。

明るい青春ドラマの延長では全くない。
オメダの奥さんは、悪い人ではないが、本編のファンから見たら、全く感情移入できない人物像だ。
恋愛の末に結婚したような雰囲気を全く感じない。
オメダが、ただ仕事、そして結婚という社会人の”台本“にのっとって悩みながら生きてきた、ということを表現する意図を感じる。

実際、妹の真弓(岡田奈々)のせりふによると、オメダは何をしてもうまくいかず、鳥取に来て、ますます自分が惨めになって自己嫌悪に陥っている。
そしてカースケが世界中を飛び回って活躍していると聞いて、ますますたまらない気持ちになり、失踪したようなのだ。
そして旅先でであった隠岐の島で旅館をやっている子持ちの女性の家で暮らし始める。

最も生活に苦労していそうなカースケは、意外にも羽振りの良い生活を送っている。
女の子には不自由せず、楽しい生活を謳歌している。


対照的に洋子は不遇な人生を送っている。
旦那から離婚を切り出されるシーンから始まる。

靴も安物で、服も質素で旦那に献身的に努めて暮らしていた様子だ。
決して幸せとは言えない生活を送っていた。

このように、本編では堅実な生活を進んで実を結んでいそうなオメダと洋子はあまり順調な10年を送ってはいなかった。4人は悲喜こもごもの人生を送っていたのだ。

オメダを探すために、カースケ、グズ六、洋子、そして真弓の4人は再開する。

隠岐の島で、なんとかオメダを見つけ、説得するが、オメダは皆の顔をみて懐かしがるどころか態度を硬化させる。

割り切れない自分の人生。
まだ混沌と苦悩の30代なのだ。



オメダのことで皆で飛び回っている間に、船の中で、カースケは真弓から”カースケは皆を不幸にする”となじられる。

本編でも洋子から言われたセリフが頭によぎる。

この“カースケは皆を不幸にする”について考えてみる。
カースケの自由気ままな行動に振り回されている、という意味と、生き方の自由さに
”魔力”のようなものを持ち、それが社会常識にのっとって生きようと必死でもがく人間にとっては、余計な苦しみを与えるという意味だ。

もちろん、カースケは、周りをかき乱そうとしているつもりではない。
必死にもがいているという意味では、カースケも同じぐらい苦しんでいたのだ。
しかしカースケは毎日を楽しく生きるという理想に向かうことを貫こうとしている。
それが社会に出て10年ほどたった30代半ばで、まだその苦しみが仲間にあるということに苦しむのだ。

酔っ払ったオメダの女をカースケと洋子の二人で、夜道で追っかけている最中、
カースケは洋子に昔話をした後、自分は周りを不幸にしていると思う?と洋子に尋ねる。



こういう時のカースケは不安げに洋子の表情を固唾をのみながら覗き込む。
洋子は無言で何も言わない。それが答えなのだ。


運命の糸、絡まず

オメダの騒動が収まり、一段落すると、洋子とカースケは二人きりで美術館を見物に行く。
そして海辺に場所を移す。


カースケは洋子に「俺のところに来いよ」
初めていうプロポーズのセリフだ。



学生時代から洋子が日本にいる間、一度も言われなかったプロポーズのセリフ。
これが洋子が旦那と別れる苦しい状況でいわれることに、同情の意味合いを感じ取った。
洋子にとって、カースケと一緒になるときは、洋子自身が充実した状態で、カースケも洋子だけを見つめる状態を確かめたうえでないと、本気にはなれなかったのか。
「津村君に同情されるなんていやよ」
と砂浜を走って逃げる洋子。



そのまま駅に向かったと聞きつけて、米子の駅まで追いかけるカースケ。
洋子がホームについた列車に乗ろうとするとき、必死に探しているカースケを見つける。
追いかけてくるカースケとこのまま一緒に乗って、二人一緒になる人生もある。
しかし洋子は見つからないように車両のドアの陰に隠れる。
完全に隠れないで、カースケが探してホームを走っている姿を見てはまた身を隠す。



カースケはついに洋子のいるドアまで来て探すが、見つけられない。
すぐに次の車両へと向かっていく。
まもなくドアは閉まり、列車は洋子を乗せて走り去っていった。
10年ぶりの再会がカースケと洋子を結びつけることはなかった。

仲間は希望であり、気になる存在だ。
それが時には励みになれば、心を引きずる存在になりえる。
まだ若い20代はもとより、長い人生から見ればまだ未踏の未来を抱える不安の30代になってもだ。

ラストシーンこそ、カースケ、オメダ、グズ六3人が一緒になってオメダの奥さんに謝りにいくコミカルなシーンで終わるが、この「十年目の選択」は、必ずしも皆が順調な人生を過ごしているわけではなく、生きることにひたむきに奮闘している”現実”が描かれている。

(「十年目の再会」 終わり)


2019年2月24日


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