「俺たちの旅」- 鑑賞記録 – 3.本編2 – 第一話~大学卒業編


青春TVドラマ「俺たちの旅」の鑑賞記録。


3.本編2 – 第一話~大学卒業編

1975年の時代背景

今振り返ると、1975年というのは時代説明の難しい時期だ。
1970年前後の学生運動も終わり、若者は熱狂的なフォークやロックの音楽への情熱傾倒も落ち着いてきた時期だ。
かといって’80年代のバブルのような華やかな一時代の始まりでもない。
「しらけ世代」と言われ、若者が熱中する対象を喪失していた時代だ。
1975年8月にはバンバンの「『いちご白書』をもう一度」という曲が大ヒットするが、この曲はこの年代を象徴する曲だろう。

不景気な時代の設定で、”不景気だから”というセリフが本編46話を通じて随所にでてくる。
つかみどころのない時代の中で、サラリーマン志向、大企業志向の風潮が高まる中で、若者が社会に出ていくことの不安と葛藤が描かれている。


三人の主人公

修学院大学4年生の津村浩介(カースケ/中村雅俊)と中谷隆夫(オメダ/田中健)は同じバスケット部に所属する友達同士だ。
カースケは第一話から、オメダの家に転がり込もうとする。

カースケの同郷の先輩、熊沢伸六(グズ六/津坂まさあき(現・秋野太作))は会社を首になったばかり。
大家の一軒家の庭に建てられた小さな借家に住んでいるグズ六。
その母屋の娘が恋人の紀子(上村香子)さんだ。
紀子さんに言われて、その晩両親の家に出向いて結婚を申し込もうとするが、無職で気が引けて切り出せずに終わり紀子さんになじられる。
グズ六は早稲田大学を出て社会人数年経験と、カースケより先輩格だ。
失業して落ち込んだり紀子さんとデレデレしたり、カースケたちと取っ組み合いの喧嘩をしたり。
中村雅俊は主役、田中健はハンサムな俳優だ。
津坂まさあき(現俳優名:秋野太作)はコミカルなキャラクターの“グズ六“を見事に演じている。
グズ六の存在で、3人の集団の個性と魅力が各段に増している。

第一話で、飲み屋でカースケと偶然再会し、カースケとオメダは、グズ六の部屋に転がり込み、3人の共同生活が始まる。


マネージャー洋子

カースケ、オメダ、グズ六に続く重要人物がバスケ部のマネージャーでカースケの同級生、山下洋子(金沢碧)だ。

両親が裕福で真面目でしっかりした女子大生。
自由奔放なカースケのことが好きだが、いいかげんで就職活動も真面目にやらないカースケの世話をこまごまと焼く。
カースケといえば、洋子に世話になりながらも真面目に恋人として接するわけでなく、ずるずるとただ食事をご馳走してもらったり、面倒をみてもらうだけだ。
心配する洋子を時には邪見にしたり、すんなりと恋人関係にはならず卒業間際まで来ている。
一方、オメダは密かに洋子のことを想っている。
ただ自分の気持ちを押し殺して、いつもはカースケと洋子がうまくいくよう間に入っている。
本編の終盤になり、洋子に結婚話が持ち上がり、カースケも自分の気持ちを決めなければならない局面が来るが、オメダの洋子を想う気持ちに遠慮してしまい、複雑な三角関係が続いていく。


本編

第4話

カースケは同郷の不良友達タマ(石橋正二)と偶然出会う。
カースケは懐かしさの反面、オメダ達への態度の悪さ等悪行を見るにつけ、かつてのめちゃくちゃな自分を見る様で複雑な思いに駆られる。
東京に出て大学生になり自由奔放にやっているつもりでも、昔の野放図な時に比べると自分も大人になっていることに気づかされる。
ある日、タマが、そんなカースケとの友情を確かめようと、4時にやくざの出入りがあるといって、カースケに来るようにオメダに伝言する。
カースケはバスケットの練習を中断して飛び出そうとする。
それを知った洋子が必死で止めにはいる。
”人は裏切ったり裏切られたり、傷つけたり傷つけられてせいちょうしていくのよ”と諭すが、カースケの怒りを買う。
洋子にビンタをして“お前、人を裏切るってどんなことか知ってるのか?”
と怒鳴って、たまを助けに行く。
お嬢さんの洋子は、初めて人にぶたれ、大きなショックを受ける。

第5話

洋子は前回、カースケにピンタをされて、NBSラジオの受験の自信もなくなってしまう。
お父さんと酒を飲んで酔っ払い気持ちを紛らわせる。
オメダはピンタの件を聞いて、必死でカースケに謝らせようとするがうまくいかない。
カースケの洋子に対する不真面目な態度にオメダは怒る。
自棄になって女友達と夜遅くまで飲み、次の日はNBSラジオの就職試験も受けずに友達と旅行に行くという洋子を、オメダは必死に試験を受けに行くよう説得する。
洋子は、カースケに真剣に怒られたことで、優等生だった自分を見つめなおし、もう一度何もかもやり直したいという。


そして”中谷君が私のこと好きだってずっと知ってた。キスしてもいいのよ“と言われ、困惑するオメダ。


戸惑うオメダを見て走って逃げだす洋子。
3人の心の葛藤が交錯するシーンだ。

オメダは洋子の自棄になる表情に、カースケが好きな意思を見て取り、家に帰るとグズ六に”失恋をした“と告げる。

グズ六はグズ六で、紀子さんの両親が、カースケたちの勝手な居候状態が続いていることに怒り心頭状態。
紀子さんはカースケとオメダに出てもらうよう依頼する。
グズ六は2人を追い出そうとするが、オメダが暗い顔をして失恋したと聞いて、追い出すのをやめて飲みに連れ出し、慰める。
そして朝方、カースケに洋子にNBSを受けさせるよう言い、すんでのところで旅行に行く洋子をカースケは説得し、洋子はNBSを受けに行った。

第7話

エンディング・テロップ
「明日のために今日を生きるのではない。今日を生きてこそ明日が来るのだ」
名言である。

第20話

カースケが自分の生き方に揺らぎを感じるドラマだ。

洋子はカースケに“もう津村君の心配はしない。だけど中谷君まで巻き添えにしないで”という。
カースケは自分の悪影響がオメダに与えているといわれてショックを受ける。
悩んだ結果、オメダに別々に暮らそうと提案する。

その日はバイト先のおじさんをけがさせてしまう。
大事に足らなかったが生活をかけて働くおじさんを、気軽なバイトの身分の自分がけがさせてしまったことにひどく落ち込む。
酔っ払って帰ると部屋に洋子が就職の紹介状を持って来てくれていた。
寂しさを紛らわせるためにカースケは洋子に抱きつくが、洋子は“酔った勢いでこんなことをするのはいや”と拒否し、部屋を出ていく。
すぐに部屋に入ったオメダは事情を察し、”お前はいい加減なんだ”と何度も叫びながらカースケに殴りかかる。

カースケは力なくアパートを出ていき、水戸に帰った。
妹に“おにいちゃんはいい加減な男だと思うか?”と聞く

カースケとオメダの同居の危機

ワカメ(浜田大造/森川正太)が心配して部屋に残るオメダに聞く。
”あいつはいい加減なんだ。本気で好きでもないのに洋子さんにあんなことを“
というオメダに、
ワカメは、”本気で生きる”、”いい加減に生きる“というカースケとオメダの喧嘩の価値観の対立に、一石を投じる。

”どうして本気で好きじゃないとわかるのですか?“
”酒飲んで寂しくて女の人にすがる気持ちが本当のきもちってことがあるんじゃないですか?“
“本気で生きるってどういうことですか?”
ワカメは、カースケたち3人に出会って、人生の価値や喜びがわかったと説く。

”あんたたちが別れ別れになったら、俺はどうしたらいいの?喧嘩別れしちゃ俺困るんだよ“
”明日からどうやって生きていったらいいか、わからない“と涙ながらに訴える。

オメダはカースケを水戸まで迎えに行く。
カースケは、”俺は俺の生き方しかできない。
今日一日を精一杯生きる。そんな生き方しかできないんだ、俺は“
”俺には将来の夢も、人生の目標もなんにもない。ただ明日死んでも後悔しないようにその日その日を精一杯生きる。そんな生き方しかできないんだ“
と言う。

第25話

卒業間際にオメダとカースケは東名不動産に内定が決まる
しかし入社前の研修で社歌や社則を唱えさせられる毎日に、カースケは卒業前にあっさりと会社を辞めてしまう。
がっかりする洋子。
カースケはまたバイト生活を始める。

新しいバイト先で女の子に声をかけてほかの社員から嫉妬を買い喧嘩をして殴られる。
洋子が心配してカースケとオメダがいる部屋に訪ねてくる。

そしてオメダと洋子は、就職をあっさりやめてバイト先で喧嘩をしてけがをしているカースケを見かねて、説得をする。


“バイトバイトでずっとやっていくつもり?”(洋子)
“少しぐらいいやなことがあっても務めなきゃ仕方がないんだ”(オメダ)
”一生バイトやっていくわけにはいかないでしょう?“(洋子)
”その日その日が楽しければそれで済むってもんじゃないよ”(オメダ)
と二人に言われるカースケは

”その日その日が楽しくなきゃ、どうして一生楽しいんだよ“
と反論する。

”その日その日暮らしの人にお嫁に来てくれる人なんていないわよ“(洋子)
“いるかもしれないじゃない。こんな俺でもいいっていう人がいるかもしれないじゃない”
”人と同じ結婚をしないといけないってことはないだろう。人と同じ人生を送らないといけないってこともないじゃない“(カースケ)


洋子とカースケの価値観のスレ違い。
しかし必死のカースケの言葉は洋子の心にも響く。

オメダは会社の仕事になじめずストレスが溜まる毎日。
帰宅の道すがら、女の子をお茶に誘い、気に入られその子の部屋まで連れられるが、玄関に入ったところで怖気づいて逃げる。
背後から“意気地なし”とののしられ、さらに落ち込むオメダ。
何をしても、カースケと自分を比較して自分を責め、悩む。


そんなオメダの姿を見て、洋子はカースケに言う。
“あなたにあこがれてた。ずっとあなたの生き方にあこがれてた。でもだんだんついていけなかった。ってさみしそうだった”
“そんなことでくるしむことないんだよ“ カースケは言う。


”好きだから苦しむのよ。中谷君。津村君好きだから“
洋子は自分の心情も重ね合わせ、カースケに強く言う。

”誰も迷惑がかかるわけでない。でも周りで苦しんでいる人がいるのよ“
”あなたのこと好きだから。好きだから苦しんでいる人がいるのよ“



そういって走り去る洋子。
このセリフは、3人の関係の象徴であり、複雑な呪縛を最も言い表しているセリフだ。

カースケ、オメダ、洋子の3人の関係は深く、依存し合いながらも膠着を深めていく。

カースケはオメダの心情を察し悩む。
ただ、洋子の気持ちまで気が回ったのか?は定かではない。
悩みながらも、自分の生き方を貫くことに必死のカースケ。

卒業後の新たな人生が始まる。

(「本編2 – 第一話~大学卒業編」終わり )


2019年2月24日


タイトルとURLをコピーしました