「俺たちの旅」- 鑑賞記録 – 4.本編3 – 大学卒業~最終回編


青春TVドラマ「俺たちの旅」の鑑賞記録。


4.本編3 – 大学卒業~最終回編

卒業後、洋子やオメダとグズ六は会社に所属して社会人生活を始める。
カースケだけが会社に所属せず、自由気ままな暮らしを求めるが、周りが社会人となり、ますます社会の風当たりが強くなっていく。

第26話

洋子は職場の女子に、先輩社員との仲を嫉妬される
就職した洋子は社会人としての悩みが待ち受けている。
洋子は夜、カースケに職場の相談をしにきたが、カースケの不真面目な態度に怒って帰ってしまう。
”少しは洋子のことを考えてやれよ”とオメダになじられる。
自由にその日その日を生きようとするカースケに、社会に出て働き始めた周りからの声が強くなる。

カースケはバイト先で気に入った癖のあるおじさんと仲良くなる。
自分の生き方にこだわりを持ち気風がよいおじさんに、自分の理想の将来像を見いだしたカースケ。
部屋に招き入れ飲み明かすが、翌日、オメダの財布を盗んで出ていったことに気づく。
さらに親父さんは奥さんを泣かせて逃げられたことを知る。
オメダと洋子は、そのおじさんに、カースケの未来を重ね、心配する。



”やっぱり就職したほうがいいんじゃない?“(洋子)
就職のあっせんを受けてもかたくなに拒むカースケ。
“俺はおれのしたいようにするよ”(カースケ)
“あのおやじさんのようになってもいいのか?”(オメダ)
“人間は神様じゃないんだよ。少しぐらい欠点があったからって、その人を駄目だといえるか?”(カースケ)


しかしおじさんが、酒とばくちで職場の皆の金を使い込んだことを知る。
”おやじさんこそ俺の生きる道だと信じていた”と言って落ち込む。

おじさんは、“かっこつけちゃった”という。
”おめえにとやかく言われる筋合いはねえ。少しくらいピンハネしたからってどうだっていうんだ。正義感ぐりやがって。俺のことはほっといてくれ”
このセリフを吐くおじさんに、自分の姿を重ね合わせるカースケ。

32話

洋子は矢沢から結婚を申し込まれる。
カースケとオメダに相談をする洋子。
”君の正直な気持ちを言えばいいんだよ“オメダは言う。
”わからない”“ただつらいのよ”と洋子。

矢沢と会った洋子。本番のスタジオでカースケと矢沢に見られた洋子は放送がメロメロになってしまう。
”洋子を幸せそうにしてくれそうな人じゃない“”しろよ、結婚“そういうと動揺する洋子。
”そのほうがいいんだよ、俺も“寂しそうに言うカースケ。

そのあと落ち込むカースケ。

グズ六の家に皆で集まり、洋子に言ったことを皆に言う。でもカースケは言う。
“でもいいながらそんなことは嘘だ、と思ってた。本当は洋子に他の男に結婚してほしくない。それなのにカッコつけてそんなことを言った俺がいやになった”



洋子は洋子で悩む。
オメダは家のそばの飲み屋で、洋子が一人で飲んでいるのを見つける。
矢沢のプロポーズの答えに悩むが、
“本当の気持ちじゃないのに、幸せになるためにはいなんていうのいや。そんなのいやよ。辛くてもいいの。辛くてもあたしが好きになったんだから。好きなんだもん。
辛くてもこのままでいい”
とオメダに言う。

店を出て夜道を歩くオメダと洋子。偶然カースケが通りかかり、酔っぱらった洋子を心配して声をかける。
泣きながらカースケの手を払いのけ

”こんな時だけ優しいからいや。嫌なのよ”と泣き崩れる。



洋子を送っていくオメダ。洋子の姿を呆然と見守るカースケ。

最後に3人で話す。オメダもカースケもなんかもやもやしていると。最後にオメダが言う。
”お前も洋子さんが好きだからだ“。
この言葉で、オメダも洋子が好きなことで悩んでいることをほのめかす。

第34話

ワカメとカースケが、何でもする会社を作る。
まだサラリーマン勤めをしているオメダは「ふざけるな!」と怒る。

営業が向いてなくて悩むオメダと口喧嘩をしてカースケは

「俺より収入があろうが地位が高かろうが、生きるのが楽しくない奴は、俺よりずっと馬鹿だよ。」と怒鳴る。



カースケが「俺たちの旅」を通して見せる生き様の象徴的なセリフだ。
オメダと口論の上、自分に語り掛けるようにカースケはつぶやく。

「生きていくって楽しいものだよ」

第39話

日本の将来を支えていると自負するモーレツ商社マンであるグズ六の兄、昌也(中尾彬)が登場する。
優秀な兄を尊敬するグズ六。一方、昌也は、グズ六たちの自由な生き方を徹底的に否定しつづける。



出世のためなら何でもやる昌也は、退社した部下を強引に引き戻そうとする。
その部下は「僕は一生、人を追い越し、人を蹴落として生きていくのかと思うと、何もかも嫌なんです」と、モーレツ出世競争に身を置く人間の切実な心境を吐露する。
そんな部下を卑劣なやり方で強引に復職させるが、最後は皮肉にもそのあおりを食って昌也は海外の僻地へ赴任となってしまう。
狂信的なまでに人生の価値を人との勝ち負けや経済貢献にこだわる姿は、グズ六たちが見切りをつけた競争社会の生き方の象徴だ。

「日本の経済より自分に惚れてくれてる女の方が大事だよ」
カースケは、無意識に、自分に惚れてくれる女への愛情を口にすることがある。

最後の文章は「日本の将来と ただひとつの愛と あなたにはどちらが大切ですか?」
この問いかけは今も不変だ。

第41話

カースケのお母さんに恋人がいたことを知る。
母親の元恋人と飲み屋で偶然出会う。
その男から、母親がカースケと妹を置いて2日間、一緒に過ごしたという話を聞いて衝撃を受ける。
その男から、母は結局、ぐれているカースケが心配だからと結局一緒にならなかった、という話を聞く。

母が荒れるカースケのために、自分の幸せを選ばなかったと聞いて、ひどく落ち込む。
死んだ母親のために今から何もしてやれない。

母親への後悔と自分の今後の生き方の漂流が今も続いているのだ。

第42話

「なんとかする会社」が仕事に窮している。
家庭を持った男は理想を追い求めることはできない、とグズ六はほかのメンバーに声高々にいう。
カースケが仕事先で出会った矢島という染め物の仕事を打ち込んでいる男も、奥さんから離婚を迫られているのを見て、理想と現実のギャップを痛感する。
カースケは矢島の姿に、好き勝手にやっている自分たちの将来を重ね合わせる。

唯一結婚しているグズ六に、経済的な厳しい現実がのしかかってくる。

冷蔵庫も買えず、紀子さんがこっそりピアノのバイトを再開していることにグズ六は心を痛める。
知人の会社から、「なんとかする会社」を支店に、という誘いを受け、グズ六は他のメンバーに同意を求めるが、反応はばらばらだった。

しかし矢島が奥さんの心配に折れて染め物の仕事を退職する姿を見て、グズ六は逆に
代理店の傘下に入る話を断る決意をする。
カースケに「せめて俺たちだけでも自分たちの生き方を通そう」と告げる。
夜更けの工場でカースケと二人で、見よう見まねでお母さんと奥さんのために作った着物をみて「生きている実感というのはこういうことだよ」と充実した顔でいう。





年とともに夢を追い求める難しさを思い知りながらも必死で抵抗する3人。
家族や周りの心配や、生活を支えていく重たさが日に日に大きくなってくる。

第46話

カースケはオメダが今も洋子を好きなことを知り、悩む。
洋子が会社から南米行きを打診されていることをカースケとオメダに告げると、カースケは自分の気持ちとオメダの気持ちのはざまで悩む。
洋子は、カースケに南米行きを止めてほしかったにもかかわらず、カースケはオメダが洋子を好きなんだ、と的外れなことを言い、洋子を失望させる。

危機感を感じたオメダは母親を巻き込んで、カースケにはオメダは気にしないで洋子に自分の気持ちを言うよう説得する。

カースケは意を決して洋子の仕事先の鳥取まで行く。


オープニングのシーンと同じ、白い砂丘を二人で歩く。

 


カースケが洋子に南米に行かないでくれ、と懇願したが、意外にも洋子はもう南米行きを決めたという。

「津村君があんなに悩んでくれて、津村君の気持ちが嬉しかったの。だから行くことにしたの。私、津村君を苦しませたくない。中谷君も苦しませたくない。好きなんだもん。両方とも。」

3人の友情と愛情が複雑に交錯し、洋子は自分の道を選んだのだ。
もしカースケが最初に南米行きを相談されたときに洋子にプロポーズしたのなら、違う結果になっていたのかもしれない。そうならないのがこの3人だ。

カースケは鳥取でこのまま一泊するよう誘う。
洋子は動揺する。


鳥取砂丘の真っ白で広大な地平線に二人の小さな姿のシーン。
孤独な二人の心情が眩い光に照らされて立ち尽くしているようだ。


最終話にして二人は一夜を共にする。
キスすらしないで来た二人は鳥取の旅館で残り僅かな時間を過ごす。
洋子の視点でその日の昼の海や花火、夕闇の景色、そして翌日の早朝の浜辺のシーンが続く。


小椋佳の「少しは私に愛をください」のメロディがヴァイオリンで奏でられる。
朝焼けの中に洋子は静かに佇んでいる。
二人は結ばれたはずなのに、幸せな様子はない。
まもなく南米に出発することに変わりはない。
最後の最後で二人は辛うじて点のように交わるが、洋子とカースケが安住の地を共にすることは最後までなかった。

空港でオメダとカースケが洋子を見送る。
カースケは落ち着かず、洋子に目を合わそうとしない。

 


”津村君は明日になったら、何してるかわからない人だから。でもそれでいいの“
と言い残して、搭乗口へ向かう。

 


最終回のエンディングは特別だ。
「ただお前がいい」がいつものように流れた後は「俺たちの旅」で締めくくる。

3人が街で戯れるいつものシーンから、ヨットに3人で乗っているシーンへと変わる。

デッキでくつろぐ3人。
カメラはヨットの遥か上空からの撮影に切り替わり、ヨットの上から大きく回転しながら撮り続ける。
「俺たちの旅」の曲が流れながら、カメラの角度で順光・逆光と光が大きく変わる。

海が眩く輝くと、大いなる明るい未来へ進むように見える。
そして向きが変わると一転して海は限りなく黒い色へ変わり、ヨットの帆だけが白く映し出される。

カメラはどんどん上空へ上がりヨットは小さくなっていく。
そして暗く青い海を頼りなげに進んでいく。

 

ヨットはただ風任せに進み、さらなる暗闇へと走り続ける。
広大な暗い海を進む小さなヨットは、そのまま3人の若者の行く末を暗示しているようである。
たとえどんな苦難が待ち受けていようと、3人それぞれの人生は広大な時間軸を懸命にかきわけて進むのだ。

(「本編3:大学卒業~最終回編」 終わり)


2019年2月24日


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