「俺たちの旅」- 鑑賞記録 – 11.五十年間の旅を終えて

青春TVドラマ「俺たちの旅」の鑑賞記録。
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11. 五十年間の旅を終えて

※以下には、映画「五十年目の俺たちの旅」の物語内容に関する具体的な言及が含まれます。
作品を未鑑賞の方や、内容を知りたくない方は、ここから先の閲覧にご注意ください。

脚本家と主人公達の「俺たちの旅」


「俺たちの旅」脚本家の鎌田敏夫さんも畑嶺明さんも、父親との距離で共通点があった。
鎌田敏夫さんの著書によれば、中学の時から父親とは別居していたとある。畑さんも父親とは離れ離れだったと伺っている。
「俺たちの旅」で、父親との距離がある主人公達が、親からの独り立ちと、亡き親の影を求める姿が交錯しているのは作者の原点が大きく影響している。

ジャック・ケルアックの「路上(オン・ザ・ロード)」という小説がある。
青春放浪小説の金字塔といえる作品だ。
主人公サル・パラダイスが友人ディーン・モリアーティと全米を旅する。
自分探し、そしてモリアーティが幼少の頃に別れた浮浪者の父を探す旅の物語だ。
「俺たちの旅」は、さながら「路上(オン・ザ・ロード)」の日本版といえよう。

TVドラマ本編は、好評だったおかげで6か月延長となり、23話で終了の予定が、46話まで続いた。
そのため前半の25話までは親からの独り立ちを経て大学卒業までだったが、後半26話からはカースケ達が社会人となったドラマだ。
もともと大学生の青春ドラマは前例がなく、大学生ドラマだけでも作り手にとって未知のスタートだったのが、大卒三人の社会人ドラマという、さらに難しい設定となった。
しかしこの後半のシリーズも巧みに当時の時世の話題を織り込みながら「ニッポンの将来はどうなりますか?」等の名作ドラマを生み出しながら大成功に終わった。

伝説のドラマとなりTVドラマ・シリーズを終えたが、節目となる10年後、20年後、30年後はスペシャル版として、それぞれ30代、40代、50代の主人公たちの苦悩と友情を見事に描いた。
またカースケと洋子の関係は、主人公三人の友情に匹敵する壮大なドラマに発展した。

この時点でファンも40代~50代になり、現在では60~70代になっている。
10代~20代から見ていたファンの人生大半をなぞる時間経過となり、ファンは自分の人生を投影する見方に変わっていった。
「俺たちの旅」に共感できる内容は多様化し、ファンのシンパシーは年月とともに深まっていった。

30年目で完結したと思われていた「俺たちの旅」の50年目の映画は、ファンにとって思いがけないボーナスであると同時に、最後の完結編としての期待が高まった映画だった。
脚本家の鎌田敏夫さん、そして映画監督兼主役の中村雅俊さん等スタッフは、いかにファンの高い期待に応えつつ、この壮大なドラマの最終編に着地させるか?相当、推敲を重ねて苦労をされたと推測する。

そして映画公開前に鎌田敏夫さんや中村雅俊さんは、「人生は切ない」がテーマである点を強調していた。
20代の頃の熱い友情一辺倒で押し切るわけではないが、かといって70代の”老いた人間の苦悩”で暗く終わるわけでもなく、バランスの取れた「俺たちの旅」の作りだった。
そして最後の最後に天国の洋子からのメッセージで終わるエンディングは、あっと驚かせる見事な終わり方だ。

 


「カースケ」の終着点

「五十年目の俺たちの旅」では、人生の終着点というテーマの示唆があった。
オメダは人生の終着地点として、母親の幻影を選んだ。
グズ六は”死んだ母親のもとへ帰すなんて、普通の人には理解されない。しかし俺たちは信じる”とオメダを擁護する。

帰るあてのない人生の旅の放浪の果てに、自分以上の苦労をして育ててくれた親元の家に戻る。
これは「俺たちの旅」の終着点の一つとして共感できる。

それではカースケは自分の人生の終着地点に何を選んだのか?

映画では、最後の方のシーンで夕方の海辺で一人佇み、洋子を思い浮かべるシーンが流れる。
『俺たちの旅 十年目の再会』の終盤、白浜の海辺でカースケが洋子に“俺のところに来いよ”と誘う。
スペシャル版を含む「俺たちの旅」シリーズで、唯一、カースケが洋子にプロポーズするシーンだ。
そしてこの二人は結ばれることなく終わる。

今まで、洋子がどんな思いで自分を支えてくれたのか?どんな人生を過ごしてきたか?に想いを馳せる。
オメダが亡き母親の幻影に最後の人生を選んだ姿を見て、カースケは自分を愛してくれた洋子を終着点に選んだように解釈できる。

50年目にして、カースケはたどり着くべき所へ帰り着いた。

 

 

 


エンディングロール

ファンの私たちは自分たちの人生を毎日楽しくするために戦って生きてきたか?
自分を愛してくれる人がいたとしたら、その人の気持ちを大切に生きてきたか?

おそらくどちらも胸を張って”できた”といえる人は少ないのではないか。
なぜならそれは、理想として”もっとも”でありながら、人は理想と離れた現実の世界で生きているからだ。
若きオメダとグズ六の人生の延長線上に、今も私たちはいる。

だからこそ、カースケの「第34話のセリフ」”生きることが楽しくない奴は俺より馬鹿だよ”が、今も心に刺さる。
かつて大切に思った人を愛し続けずにいられなかった過去をだれもが抱えているから、”無償の愛というものが何よりも尊い”ということがわかっているから、洋子の存在に胸を打たれる。

私たちはこれからも”友情”を信じたい。

今まで長年、生活のために必死で我慢して働いてきて、多くの時間やエネルギーを犠牲にしてきた。
引き換えにしたのは、その対価である給料や仕事の肩書、家族の生活等。
それらとは全く別の価値として、”友情”や”毎日精一杯生きること”が燦然(さんぜん)と輝く最も貴重な価値だと信じたい。

そしてかつて愛した人たちの顔を思い浮かべ、今は幸せに生きていることを願う。
人を愛することの大切さは誰もが理解するが、愛し続けることの難しさは、人生の時間の大半をかけてようやく悟り始める。
だから洋子の存在は時を追うごとにファンの心の中で大きくなり続ける。

これからも私たちは現実と理想のはざまをさ迷い歩く旅を続ける。
そしていよいよ、それぞれの人生の終着点に向かって歩き始める。
その行く先は最後の最後まで、「俺たちの旅」のドラマのシーンのように、赤い夕陽が照らし続けてくれるだろう。

  

(「五十年間の旅を終えて」終わり )


2026年2月13日


 

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