阿片地獄

阿片地獄

男とも女とも似つかない、足のすらっとした少女。
おかっぱの下の目元からは妖力が漂っている。

古びた小屋に入り込み、棚の前に座り込むと、何やら強く念じている。
一たび赤い着物を閃かせ、傘を空に差し出しながら何やらつぶやき始めると、
太陽の光は赤や青に変わり、空から海水は流れ落ち、朽ち果てたスクラップ工場は
タイムスリップした未来の遊戯会場のように早変わり。

まるでここに、昔から住んでいたかのようにこちらをじっと見据えている。

 

白日夢の猫を、かすかな記憶の中で追いかけているような、とらえどころのない存在感。

しかし、確かに彼女はこちらを見て、私の魂を虎視眈々と見据えている。

(「阿片地獄」 終。 平成二十六年七月十九日)

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