燃え尽きた記憶


第一話

 

「ゴー。ゴー。ゴー。」

町の避難訓練のサイレンのように響き渡る低音
窓から顔をだして外を覗き込む顔
空を見上げる者
地を這い、この後に起きることを息を潜めて待つ者

祖母から聞いた遠い昔の忌まわしい出来事
遙か彼方から歴史のうねりを押し破り、再び入り込んできた流水
車が、店が、看板が、根こそぎ押し流されていく
どす黒い流れは雲のごとく町を飲み込んでいく

流されていく町並み
燃えていく風景

町中を揺るがす轟音
かすんでいく大切な人の顔

燃え尽きた視界

 

(第二話へ)


 

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