深い緑の影に意識が沈むこんでいく。
目をつむり、体が全てから解き放たれ、暗い深淵に葬られるように。
月の光を避けるように、森の険しい道を歩き続ける。
森を覆った暗い闇は心の中にまで忍び込んで来る。
木の葉を振り払い、神経を研ぎ澄ませ、道なき道を歩いていく。
狼が獲物を取れない時は、家族の元へは帰らない。
森の辺境のさらなる片隅で、用心深く木の幹の裏から顔を出し、月の光を浴びながら
明日の獲物を捕まえる作戦を考え続けている。
決して安らぎを求めようとはしない。
獲物が見つかるまでは一日中、追い求め、さまよい続ける。
それでも見つからなければ、ここでまた考え続ける。
焦燥感が胸を焼き尽くし、血走った目から血の涙を流しながら、
死ぬまで独り、獲物を探し続けるのだ。
(終)