旅の絵模様

旅先の何気ない光景は決して言葉には表わすことはできない。カメラでさえ、その風情を留めることはできない。


 

懐かしい光景。遠い昔の少年の日、田舎のおばあちゃんが迎えにくるようだ。

 

無人駅で電車を待つ中年夫婦。穏やかな海の情景は時間の過ぎるのを忘れさせる。

 

七月末の北海道。時折見える向日葵畑。飲食できる店が全くなく、ひたすら車を走らせた。

 

太刀持ちのように池の周りに控える桜の木々。日本の風情を当然のように保つ誇りを桜の佇まいから感じられる。

 

青空の下の富士山を見るのは意外に難しい。期待していない時に突如、その雄姿を現してくれる。

家からそれほど離れていない公園にて。野鳥を撮っている合間に突然現れた。

数年前、奥多摩の谷間を降り立った時の一コマ。秋口の青々とした空気は独りで佇むには切ない。

あと少しで冬を迎える谷間の岩の苔。場所によっては苔さえ鮮やかに映る。

人がいないのに暖かく感じられるのはなぜだろう。遠い記憶が呼び起こす暖かい温もり。

緑や黄色い葉や茶色い幹があってこそ紅葉は美しい。

枯れていくほど暖かくなっていく。

落ちてなお、魅せる


2010年8月作


 

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