証し


東の果ての黒い海の崖っ淵で
赤い髪の女とワインを飲んでいる
彼女の目は大きく 自分を写している
何かを発しそうな口元は赤く
僕の時間をちびりちびりと
飲み込んでいる

西の果ての緑の続く山腹で
羊を追う青年を見つめている
彼は若く振り向きもせず
白い群れの中へ染まっていく
柵は残された僕を取り囲み
目の前の全てを切り離した


北の果ての白い風の中で
遠く人の気配を感じる
そいつは僕以外の人を探し
僕を見つけ笑みを浮かべる
この北風はおさまりそうになく
時間も白く凍りついた

南の果ての黄色い砂浜で
たくさんの人と出会った
汗をかきながら熱いコーヒーを飲み
まわりの人としゃべり続けた
生きてる価値は確かにあり
砂を握りポケットに入れる


作: 1986 / 4 / 23

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