第一話
(i)
「ねえ、こっちにおいで」
手を伸ばして抱き寄せては、妹に話しかけるように言葉をかける。
人形を見つめる瞳は、生きている相手に接するかのように、いやそれ以上に心を開いている。
小さい頃から、友達よりもこの人形達との世界に囲まれて育ってきた。
「この子達のいない生活なんか考えられないわ。死ぬまでずっと一緒ね」
(ii)
夜、部屋に戻ると、寝るまで人形達に愛情を注ぐのが小さい頃からの日課だった。
ひとしきり、彼らの手入れをして、念入りに撫で、じっと一人一人の顔を眺めると、満足してベッドに入った。
日常の人間関係のトラブルや、もやもやしたストレスも、人形達のおかげで癒された。
ベッドに入ると、部屋の電気を消した。
ふかふかの蒲団にくるまり、あっという間に眠りについた。
夜、寝静まった部屋の窓から、月明かりがさしている。
淡い月の光が、人形達の顔を半分、照らしている。
“ネエ。コッチニ・・オイデ・・・”
(第二話へ続く)