Fujifilm XF56mmF1.2 R APDレンズ・レビュー



富士フイルムXシリーズの単焦点レンズ、XF56mmF1.2 R APDを購入した。
このレンズは、柔らかく美しいボケ味を生み出すアポダイゼーションフィルター搭載のAFレンズだ。
ピントの合った部分のシャープさは損ねずに、背景のボケの部分は柔らかくうるさくせずに描写し、立体感のある表現を出すというレンズだ。
日本人は開放で撮影したボケが大好きだ。
ボケの形でレンズの性能の良しあしを語る人も多い。
このレンズは富士フイルムの単焦点レンズの中で最も高額なレンズとして販売されているが、それだけ価値を感じる人が多いということなのだろう。

もともと私はAPDでない通常のXF56mmF1.2 R を使っていたのだが、昨年末、橋の上で撮影中、不覚にも手が滑って足元に落としてしまい、そのまま転がって、橋の床の隙間から海に落ちてしまった。
意気消沈の日だったが、ポートレート撮影中心の身、このレンズは自分にとっては必須の相棒だ。
気を取り直して同じものを購入しようと思ったのだが、その時にAPDも購入しようか?頭によぎった。
もともとXF56mmF1.2 Rを購入した時も、APDを考えたが、ボケが逆に地味かな?という印象で、わざわざ倍近く高いAPDには食指が動かなかった。

そして今回、再度購入の機会が来た。当初は同じXF56mmF1.2 Rにしようと考えた。
APDに興味がなかった点は2点。

ボケのまろやかさが地味に感じていた点。
次にAPDが微妙にレンズを暗くしているのではないか?という点。

特に後者の懸念が自分の頭からAPDをいつも排除していた。
そして今回、ネットで作例をたくさん見て改めて調べてみた。
最初の後者の懸念だが、それほど神経質になることはない、というのがわかった。
問題のボケの表現だ。そもそも自分はボケの形や、ボケの存在の有無には全くこだわりがない。ボケ・フェチでは全然ない。
今までXF56mmF1.2 Rを使ってきたが、開放近辺で撮影した時に人物のすぐ背後の背景で、むしろボケがうるさいと感じる時があった。
いろいろ考えた末の結論が、「とりあえず使っていて、APDが創り出す新たな世界を楽しんでみよう」だ。
今回のきっかけがなければ、今後もうAPDを買う機会はないかもしれない。
これも縁だと考えることにしてAPDを購入した。

自然な背景の仕上がり

そして本日、初撮影。

XF56mm F1.2R APD. F1.6

XF56mm F1.2R APD. F1.2

XF56mm F1.2R APD. F2.0

F1.2,F1.6,F2.0と絞り値違い3枚。
いずれも被写体は暗めで背景が明るいケース。これで背景のボケがうるさいと、そちらの方に目がいってしまう。
特に3枚目のF2.0のケースがそうだ。

XF16-55mm. F2.8R F4

参考までにXF16-55mmF2.8Rで撮った絵。
中央のピントの合った人物の解像度の違いは全く問題はない。
当初はこれを気にしていたが、一番大事なピントの合っているところのシャープさに欠けるレンズ等
販売できるわけがない。この点は杞憂に終わった。
むしろ背景全体のボケ具合の画像天体に対する馴染み具合、自然さ度合いが本質的な価値だ。
その点では、実際に撮ってみると、APDの方がしっくりくる印象だ。

XF56mm F1.2R APD. F1.4

バストアップ以上のアップでF1.4だとピントが合った部分以外の顔やボディの部分も柔らかくぼけてしまう。その少しぼやけた部分と背景のボケの溶け込み具合の自然さが大切なのだろう。

XF56mm F1.2R APD. F2.2

少し光の入った明るい写真。
左側の背景の部分は、APDでない標準のレンズの方だと、もっとうるさく映っているだろう。

XF56mm F1.2R APD. F2.2

これだけの順光であればどんなレンズとカメラでもしっかり映る。
この写真のように背景に木があると、結構気になるのだが、APDが存在自体を柔らかく沈ませてくれているのはありがたい。

XF56mm F1.2R APD. F1.6

XF56mm F1.2R APD. F1.2

これぐらいアップだとF2.0近辺がよいと思っていたが、F1.6やF1.2でもピントが合っている部分のシャープさと、ボケ具合のギャップが気にならない。

良い意味でAPDレンズだとは全くわからない。

最も”自然な人物撮影”ができるレンズ

肌寒い屋外での撮影だったが、収穫は大きかった。
なにより、APDというレンズの特殊性やネガティブな面は全く感じず、最も”自然な人物撮影”が楽しめるレンズだということがわかった。
これから自分のポートレート作品作りの頼もしい相棒として活躍してくれるだろう。
撮影が終わったのは12:30過ぎ。
撮影していた場所にも日差しが十分回ってきた。
東京近郊にしては厳しい寒さが続いていたが、少し和らぎを感じた瞬間だった。

(終)


2018年1月13日

モデル協力:Yuki. Instagram ID : @_yuki_25_

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