NIKONのフルサイズ一眼レフのカメラ、レンズ、ストロボセットを全て処分した。
先週から考えていたことだったが、今日、急遽時間ができたのでカバン3つに分けて詰めて売却をしてきた。
2008年秋に、NIKON D700を購入して以来(それまでの数年間はOlympusセットを使用していた)、撮影にはNIKONシステムをメインにずっと使用してきた。カメラはD700からD810に買い替えて現在に至っていた。
NIKONシステムすべて売却を思いついたのはつい最近だが、手放した理由は主に3つある。
1. ハイクオリティの富士フイルム・ミラーレスカメラX-T2の登場
富士フイルムのAPCミラーレスカメラは2012年,X-E1よりX-E2とサブカメラとして持っていたのだが、昨年秋のX-T2登場により、同時期に購入した単焦点レンズと共にカメラが写し出す画像の品質が素晴らしく、X-T2とD810はメイン・サブの役回りが完全に入れ替わった。それでもNIKONシステムの需要があったのは、ストロボ2~3灯を持参する必要のある照明セットのない、あるいは不十分なスタジオ撮影の場合だった。富士フイルムXシリーズには昨年EF-X500ストロボが登場するまでは、多灯システムがなかった。それがEF-X500は「FP発光(ハイスピードシンクロ)」「多灯システム」対応となり、富士フイルム・システムで室内スタジオ撮影も対応が可能になった。
X-T2の発色の良さは自分にとっては魅力的だ。一時期はカメラ撮影が面白く思えない時期が続いていたが、Xシリーズのカメラとレンズがたたき出す画像を見てから、俄然、作品作りのモチベーションが上がり、製作のペースが上がったのは、Xシリーズのおかげだ。人間が肉眼で見て感じる”解像度”では、NIKON D810よりもX-T2の方が上回っているように感じている。
2. 重いフルサイズ一眼レフカメラセット
フルサイズ一眼レフD810で使用していたレンズは主にAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED.
D700時代から使用していたメインレンズだったが、手ぶれ補正なしで重量900g.
カメラとセットではずっしり重い。時々AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR IIも使うこともあったがこちらは1,540g.
撮影中の重量の負担もさることながら、撮影のために持参する往復の体力の消耗も、年を取ると無視できなくなってきている。そんなことからここ数年はNIKONシステムは必要に駆られる以外で持ち歩くことは全くなくなっていた。
そこへ行くとミレーレスカメラ、富士フイルムXシリーズは軽くてよい。
X-T2+単焦点レンズ2本と標準望遠レンズ1本+EF-X500ストロボ1つがカメラ用ナップサックバック1つに余裕で入ってしまう。
体力の消耗の差は革新的だ。
カメラ雑誌「カメラマン」2016年12月号では、この雑誌恒例の年末座談会特集記事があった。私はこの年末特集を毎年楽しみにしており欠かさず購入して読んでいる。カメラ業界で有名なカメラマンの人たちがあけすけにカメラメーカーの批評をおこなうのだが、今回の参加者皆、異口同音に言っていたのは「フルサイズ一眼レフは重いので使わない」「手放した」「一眼レフカメラにミラーはもはやいらない」という発言だった。プロであっても普通の仕事であれば、ミラーレスカメラのクオリティで十分だというのだ。
そして現在のフルサイズ一眼レフのレンズを含めた重さに否定的な見解が多く、今となっては「軽さ」がカメラ選定の重要な位置を占めているようだ。
全く同感である。
今回、NIKONシステム売却に思い至ったのは、この雑誌の座談会の影響は多分にある。
3. AF合掌しないNIKON D810
実はNIKONを手放す最大の原因はこれにある。
思い起こせばD700時代からそうだったのだが、D810で室内撮影をしていてもAF合掌しないケースが多く、撮影中ずっといらいらしていた。極端に暗い室内ばかりでもない。一時期はレンズが悪いのかと思い、NIKONのサービスセンターに見てもらったが、異常なし、という結果でがっかりした。
この間、久しぶりにスタジオ撮影でNIKONセットを持ち出したが、AFが合掌せず、撮影のリズムの悪さに辟易し、NIKONを手放す決意を撮影中にしたのだ。
室内とはいえ、窓際に立つ人のAF合掌もできず、何度も中断をせざるを得ないのは、撮影リズムが重要な人物撮影では致命的だ。
カメラ1台、レンズ4台、ストロボ3台が手元から無くなり、少しだけすっきりした。
奇しくも、本日カメラ関係のニュースで、CIPAが、デジタルカメラの2016年の出荷実績と、2017年の出荷見通し等をみた。
2016年の総出荷実績は、2,420万台で、対前年比はなんと68.3%.2017年出荷見通しは2,170万台で、対前年比89.7%と減少は続く。
大きな原因はスマホがカメラの領域に浸食し、コンデジや一眼レフが食われているのが最大の理由だ。
こう書くと、とてもネガティブな状況のように思えるが、私はここで書きたいのはそうではない。
むしろ逆だ。
私は”カメラ好き“ではなく、”写真好き”の人間だ。
私は人物にまつわるストーリーを見出し、撮影をしてレタッチを行って作品作りをするスタイルだが、こんなに手の込んだ作品作りを趣味で行っている人間は極めて少数派の変わり者であることを大いに自覚している。
ただし、若い人を中心にスマホも含めて撮影を楽しんでいるライフスタイルが定着し続けている現状は、私は大いに喜ばしいことだと思っている。
カメラ業界の人間ではないので、”スマホを含まないカメラ全体”の売り上げの増減は無関心で、”写真を楽しんでいる人間”が増えている、
そしてその一部でディープに楽しんでいる人が増えている、という状況であれば、私は何も悲観することはないと思っている。
そして今はスマホも含めれば、”写真を楽しんでいる”人口は確実に増えていると思っている。
その流れの中で、フルサイズ一眼レフカメラセットが恐竜のように一部の人間向けへと縮小していき、ミラーレスがメインストリームとなり、そして多くの人はスマホでカメラを楽しむ。
人々が積極的に選択する自然な流れなのだ。
来年になればまた新たなトレンドが生まれるだろう。
フルサイズ一眼レフに何も感慨を持たずに手放した私のような人間は確実に増えている。
そんなことすら珍しいことではないぐらい、これからも大きな変革は起きていくのだろう。
instagramやtwitterで多くの人が上げている写真、(そのうちの多くはスマホで撮影・編集されたものだが)
それらの多くは、少し前に一眼レフで撮影された写真よりも美しく、光り輝いているように私には思える。
スマホでSNSを楽しむ人 = 初心者
高額な一眼レフを持つ人 = 上級者
もしもカメラ業界が、このような構図で今の状況を理解していたとすれば、今後、大きな誤りを犯す可能性があるだろう。
時代は変わっていく。
テクノロジーの世界では、”便利なもの”が正義なようだ。
(終)
2017年2月12日