富士フイルム・レンズ XF16-55mmF2.8 R レンズ比較レビュー


はじめに

富士フイルムのズームレンズ、FUJINON XF16-55mmF2.8 R LM WRを購入した。
カメラはX-T2でレンズは単焦点レンズがXF35mmF1.4 RとXF56mmF1.2 R。
他に標準ズームレンズのXF18-55mmF2.8-4 R LM OISを持っているが作品作りではほとんど使用していない。
2本の単焦点レンズでずっと頑張っていたが狭いスタジオ等の室内撮影をしていると
やはり広角も必要になってくる。NIKONシステムから富士フイルムに移行した際に
富士フイルムの単焦点レンズが叩き出す描写力に惹かれ、XF35mmF1.4 RとXF56mmF1.2 Rの2本で撮影してきた。これで広角が必要ならばXF23mmF1.4 Rを追加するところだが、撮影中に3本のレンズを交換するのは煩わしい。NIKONシステム時代は専らズームレンズを使っていたのでズームレンズの利便性はよくわかっている。
いろいろ考えた末、フラッグシップ標準ズームレンズのXF16-55mmF2.8 R LM WRを追加することにした。
先日、公園でこれら4本のレンズの撮影比較を行ってきた。そして先日はポートレート撮影でXF16-55mmF2.8 R LM WRと単焦点レンズを使って撮影をしてきた。
今まで知りたかった標準ズームレンズとフラグシップ・ズームレンズの画質差、そして単焦点レンズとフラグシップ・ズームレンズの画質差を比較してみた。

風景

風景はそれぞれのレンズで16mm(or18mm),23mm,35mm,55/56mm(単焦点は該当する焦点距離のみ)でF値は,開放~F2.3,F3.5, F5.6, F7.1 F9との組み合わせで撮影をした。
本当は拡大図やいろいろな組み合わせの紹介を考えていたが、いかんせん組み合わせ数が多いのと、このHPに載せる画像サイズで細部の差異を明確に紹介するのは難しいものが多かった。こういう比較では等倍観賞(画像を拡大して画像の細部の部分を等倍で見ること)をしないとわからないぐらいの差が多いが、私は画像というものは等倍観賞でなく、写真の絵全体で画像の特徴や良し悪しが判断されるものと考えているので、細部の比較にはあまりこだわらず、撮影した絵を極めて主観的な感想として、以下書き連ねてみる。
年寄りの衰えた肉眼によるものなので、切れ味の悪い比較になっていることをご了承いただきたい。精緻なデータ分析的な比較でなく、このHPを見ていただいている人達と同じ視点の”画像印象比較”的なものである。

比較1.森

レンズを変えている間に微妙に木陰から漏れる日差しの明るさの差で比較ができなかったカットが多かった。これは比較的差が出たカットだった。
いずれも35mm,F5.6.
1. XF18-55mmF2.8-4 R LM
2. XF16-55mmF2.8 R LM WR
3. XF35mmF1.4 R

1. XF18-55mmF2.8-4 R LM -35mm F5.6

 

2. XF16-55mmF2.8 R LM WR -35mm F5.6

 

3. XF35mmF1.4 R 35mm F5.6

 

1. XF18-55mmF2.8-4 R LM -35mm F5.6拡大図

 

2. XF16-55mmF2.8 R LM WR -35mm F5.6拡大図

 

3. XF35mmF1.4 R 35mm F5.6拡大図


中央に合わせたピント部分はほとんど差がないが周辺のディテール部分は全体のカットを見ても差を感じた。
XF18-55mmF2.8-4 R LMは暗部の描写が若干もやっとしている。
この3枚の比較ではXF35mmF1.4 Rの枝や葉の輪郭の繊細さが際立っていた。ズーム2本の描画差よりも、XF16-55mmF2.8 R LM WRと35mmF1.4Rの差の方が大きかった。こういう細かい被写体で輪郭描写が多い画は単焦点は差がはっきり出ることがわかった。他のF値でも同様であった。

 

比較2. 森&芝生

4. XF18-55mmF2.8-4 R LM
5. XF16-55mmF2.8 R LM WR
6. XF35mmF1.4 R

4. XF18-55mmF2.8-4 R LM -35mm F7.1

 

5. XF16-55mmF2.8 R LM WR -35mm F7.1

 

6. XF35mmF1.4 R 35mm F7.1

 

4. XF18-55mmF2.8-4 R LM -35mm F7.1-等倍拡大

 

5. XF16-55mmF2.8 R LM WR -35mm F7.1-等倍拡大

 

6. XF35mmF1.4 R 35mm F7.1-等倍拡大


日中の完全順光。ただし木々の中は暗部があるのでダイナミクスの差が見られる。
こういう順光の絵は単焦点もズームは出ないと思っていたが、色味や細部の描写で若干差が出た。
ズーム2本に比べると、単焦点レンズの方が色味は若干淡泊で明るく見える。これは単焦点レンズの明るさが特徴つけられている。単焦点レンズ視点でいうとズームレンズは若干色がこってりして見えると言える。
これはこの3本の比較に限らず他社のレンズでも単焦点とズームを比較すると同様だと思う。画像周辺の細かい葉の輪郭の描写で差がよくわかる。XF16-55mmF2.8 R LM WRは描写力も色味も、標準レンズと単焦点レンズの中間あたりの描写だ。

ポートレート

7. XF16-55mmF2.8 R LM WR -55mm F5.6

 

8. XF16-55mmF2.8 R LM WR -55mm F2.8

 

9. XF56mmF1.2 R 56mm F2.0

こちらはモデルさんに同じポーズでじっとしてもらって、レンズを変えてF値比較ということはしなかったので、純然たる比較画像ではない。
しかも標準レンズは使用しなかった。
XF16-55mmF2.8 R LM WRとXF56mmF1.2 Rで撮影した画像を紹介する。
近距離での人物撮影は、両者の比較は感じられない。風景と違い、人物の服や髪・服のディテールや立体感、肌の色合いなどが見た目の印象の評価となるだろう。立体感は単焦点レンズの場合、F1.2~F2.0で撮った時は浮き出るような秀逸な存在感が出せるのが富士フイルム単焦点レンズ、特に今回使用している単焦点レンズは柔らかく立体的な表現ができるのが魅力的だ。最もXF16-55mmF2.8 R LM WRの解放感もいい。色味の差は風景ほどは感じない。

総評

 

単焦点レンズと標準レンズとでは、画像周辺の繊細な輪郭描写が一番差が見られ、次に色味、そして暗部の描写等に若干の差があることがわかった。プレミアムズームレンズXF16-55mmF2.8 R LM WRは、単焦点と標準ズームの中間に位置する印象だ。風景で遠景に細かい木枝や葉の描写がある絵では単焦点との差を感じる。しかし人物写真ではそれほど差が気にならない絵になることが多いと感じた。
ただこれらの差は絵によって異なり、多くは微細な差だ。

と、ここまで書くと標準ズームレンズが浮かばれないようなので、少し補足する。
標準ズームレンズは絵によっては色がこってりとなり、暗部がつぶれるが、これはあくまで単焦点レンズと比較しての場合だ。色が濃いのが魅力にもなる。実際、今回の風景の写真を比較して色味の濃い方が印象深くきれいだと感じる人は多いだろう。
色味やダイナミクス、特に黒つぶれのあたりはフイルム・シミュレーションや露出で調節ができるのだ。
私が今回XF16-55mmF2.8 R LM WRを購入したのは、ズームの利便性だ。
標準ズームレンズは軽量でおまけに手ぶれ補正付きだ。

軽さは武器である。

そう考えると、4本のレンズ、それぞれに愛着が増してきた。
これからも不器用にレンズをとっかえひっかえ、その場に応じて使い込んでいくことにする。


(終)


2017年7月2日
モデル協力:Lilyさん。Instagram ID : lily03261988

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