Last Song – 人生最後の瞬間に聴く音楽




随分暗いタイトルに聞こえるかもしれないが、私はそうは思っていない。
人生最後の瞬間、この音楽を聴きながらその時を迎えるのであれば人生のフィナーレを恐れや後悔の気持ちなく受け入れることができる、というイメージを持てる音楽があるということは、そう遠くない終焉までの時間も落ち着いていられるものだ。
そう、私にとってはもう現実的な時期であるその瞬間を考えたときに、
その音楽がその瞬間にふさわしいかどうか?はかなり確信的にイメージできるのだ。

似たような瞬間でいうと、かつて久米宏が ニュース番組をやっていたときに、
ゲストに向かって「最後の晩餐」をどう過ごすか?必ず聞いていたと思う。
同様の問いかけは、先日行きつけのカフェにおいてあった昔の雑誌「無人島レコード」も、
多数のミュージシャンに無人島に持って行きたいアルバムとその理由 を聞いて、その回答が一冊の本となっていた。

私は数年前にもう決めている。
ささやかな遺言の前文を書き終えているような心境だ。

音楽は、邦楽も洋楽も節操なく10代から聴いて現在に至っている。
残りの人生も、じたばたしながら様々な音楽をつまみ食いするように聴き続けるだろう。
この年齢になるに至って、ある一定の音楽の趣向は出来上がっている。

最近でこそ’60~’70年代ロック、ブルースをよく聴いているが、
10代から最も聴いているのは圧倒的にBlack Musicだ。
Motownレーベルのアーティストを中心 に、その派生系音楽のブラック・コンテンポラリーあたり。
ラップ・ ミュージックが台頭するまでの時代の音楽だ。
後は’50~’60年代のR&B, そしてもっと古くはカントリー・ブルースも聴き始めてからかなりの年月が 経つ。
それ以外では、Bob Dylanは別格として中学時代から聴き続けていた。
私にとってBob Dylanは、それで一つの“ジャンル”である。
Motown関連ではMarvin Gayeも別格だ。
30代後半からはJazzも好きになり、唄ものも含めてよく聴くようになった。
そんな風に節操なくいろいろな音楽を聴いてきた自分にとって、好きなアーティストを一人選べ!
とか好きなアルバムを一枚選べ!好きな曲を 一曲選べ!といわれても選ぶのは非常に難しい。

恐らくその時々で選ぶものが違う気がする。
そう、私は音楽に関しては、あまりアーティ ストやアルバム、曲に好き嫌いの順番をつけていないタイプのようだ。

そんな混沌とした音楽趣向の極みの私でも、近年心を奪われた別格の曲がある。
そしてこの曲ならば、人生最後の瞬間に穏やかに聞ける、と思ったものだ。


それは、Barbra Streisand(バーブラ・ストライサンド)「People」
「ファニー・ガール」という映画の挿入歌 だ。



Barbraのこの曲を聴くまで私にとってのNo 1.女性ボーカルはDiana Rossだったが、
Barbraの「People」の歌声には完全にノックアウトだ。
ひれ伏して自分の人生の最後の時をこの曲で迎えたい、
そんな風に思わせた唯一の曲だ。

できればこの曲は運命を終える最期の瞬間、枕元で誰かに歌ってもらいたい。

大切な人に、肉声で耳元で歌ってほしい。

そう願っている。
これこそ人生最高の贅沢な夢だ。


(終)


2010年7月19日

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