How Does it feel ?


“How does it feel(どんな気がする)?”

Bob Dylan(ボブディラン)の代表曲「Like a rolling Stone」の一節だ。
私はこのHow does it feel ?の突き刺すような問いかけが、
この曲を最初に聞いた時の鮮明な第一印象だ。
まだLPの時代。アコースティックギターに熱中していた中2の少年時代に初めてボブディランを聴いた。

「風に吹かれて」「時代は変わる」「コーヒーもう一杯」等、
タイトルだけで男味溢れる魅力一杯の数々。
ぼんやりと思春期に入り自分の将来の不安やもてあます情熱や
エネルギーの方向に悩んでいた自分にとってボブディランは格好の憧れの人となった。
当時、自分の年齢でボブディランを聞いている人間等一人もいない。
黙々と家で聴いていて、まるで聖書でも読むようにボブディランの詞を読み返していた。

この代表曲が発表されてから40年以上経つのに、ボブディランは今も現役でツアーを行い、
数年前よりボブディランに関する映画も何本か上映されたり、
ノーベル賞文学賞候補にも毎年上がるなど、存在感は今も色褪せない。

世界中のファンも同じ時代を生きてきた。
それぞれの自分達に人生を。

ボブディランの歌で自分を鼓舞させたり、うまくいかない時の慰めに夜一人の部屋で
静かにスピーカら流れる曲に耳を傾けたり。

そんな日々を重ねながら人は気づくのだ。
人生はうまくいかない、ということを。
それは自分自身を通じて痛感することでもあったり、他人を見て思うことだったり。

スポーツでも仕事でも、成功体験が重要だと思っている。
失敗も大切だが、失敗から得られるのは“こうしてはいけない”ということだ。
だが成功するのは“こうすればいい”という確信を得られるやり方を知ることだ。
そのためには他人のアドバイスや協力があってでも、一度は成功を体験することだ。

これは自分の“表の顔”のロジックだ。
しかし、会社を出て鎧を一つずつ脱ぐ作業を、夜空の下で車を走らせ帰宅途中で
行っていくと、素顔の自分が違う意見を口にする。

「成功も失敗もない。人生にあるのは、これから過ぎようとする時間と、過ぎた時間の結果だけだ」と。


そんな毎晩繰り返される不毛な変身がある。
といっても何か変わるわけではない。

「どんな気がする?」
この自分が他人に問いかけているようであり、他人から問いかけられているような
突き放した短い問いかけは、絶えず自分の日常に横たわっている。


(終)


2009年3月2日

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