Leave me alone


人と人は社会という共同体の中で結ばれている。
そのありがたみを、水や空気のように当然のごとく普段は振る舞いがちだ。
逆に現代社会では、その結びつきを疎ましく思い、関係性を遮断したり、ぞんざいに
扱ったりすることもあるだろう。
いや、たいていの人はきっと大切にして生きているだろう。
自分のような致命的なエラーを犯して後から深く反省しながら生きているだめな人間のことだ。

“Leave me alone(放っておいてくれ)”。

キザで自己中心的な台詞だ。
しかし、人生、どうしようもなく疲れたりいい解決方法が浮かばなかったりする時がある。
そんな時、素直に人の助けを求めるような精神状態になれればよいのだが、私のようなひねくれ者は、
心を閉ざしてせっかくの大切な人からの差し伸べの手を拒んでしまう。
そして自分ひとりでただじたばたして、時間が過ぎてしまう。
大切な人が去っていく足音も遠ざかり、無限の苦しみもどこかへ失せた時に気づくのだ。
かすかな記憶にある、目の前にだされた綺麗な手や、優しい言葉の音色を。
後悔の懺悔に浸り、一人力なく過ぎた時間を思い浮かべる。
そんな日の午後の窓からさしこむ陽は、力強く希望に満ちているようである。
そんな希望にありつけなかった男は、また何かをじっと待つのだ。

“Leave me alone”。
この言葉が頭から消え去るのは、いつの日のことだろう。

(終)


2009年2月8日

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